厳格化する国際物流のセキュリティ基準を知ろう!

セキュリティ

アメリカの9.11テロ以降、国際物流の世界ではさまざまなセキュリティ基準の厳格化が進んだ。以前紹介したTAPAも、そのひとつである。しかし、そのほかにもC-TPATやCSI、AEOなど世界で普及しているセキュリティ基準が存在する。

サプライチェーンおよび国境の安全強化を目的とするC-TPAT(Customs Trade Partnership Against Terrorism)

C-TPATとは、米国税関国境警備局(CBP)によって導入された、国家と民間が連携したプログラムである。具体的には、サプライチェーンおよび国境の安全強化を目的としており、セキュリティ面のコンプライアンスに優れた輸入者等に対し、検査回数の低減等の優遇措置を施す制度だ。自主参加型プログラムのため、緊密な協力関係を通じてのみ高い水準の貨物保安をもたらすことができるという認識のもとに成り立っている。

対象は、輸入者、船舶会社、ブローカー、倉庫運営者、製造者など。参加者はC-TPATセキュリティガイドラインを用いた包括的な自己評価を実施すること、ガイドラインに基づくサプライチェーンのセキュリティ強化プログラムを開発し実施することなどが求められる。

参加のメリットとしては、検査回数の低減だけでなく、検査が必要となった場合は優先的に実施されるといったものが挙げられる。検査回数が少なくなれば、国境での時間短縮にもつながり、参加者にも有益といえるだろう。また、サプライチェーン全体の保安管理や強化を行うC-TPATサプライチェーン保安専門官の任命、CBP自己査定プログラム(ISA)への将来的な参加資格、C-TPATサプライチェーンセキュリティトレーニングのセミナーへの参加資格などの優遇措置も用意されている。

テロを未然に防ぐCSI(Container Security Initiative)

CSI(Container Security Initiative)は、米国に入ってくるコンテナおよびコンテナ船の安全保障を向上させるために導入されたプログラムで、日本では、2004年5月に東京がCSI港となった。例えば、コンテナ船に兵器を隠してアメリカに輸出すれば、テロに利用される可能性もある。こういったことを未然に防ぐために設けられたのがCSIだ。

具体的には、税関国境警備局(CBP)職員を海外へ派遣することで、リスクの高いコンテナを識別する。また、外国港での船積みの24時間前までに、船社等に積荷目録等の情報を提供させる。現在は、海上貨物に限らず航空・陸上まで範囲が広げられている。

ほかにも、対米テロの危険性を秘めたコンテナを割り出すために、情報収集、米国向けに出港する前の現地調査、コンテナの調査といった作業も行われている。また、無断で開けられた場合にはすぐ判明するようなコンテナを使用するよう求められる。

世界の貿易貨物の90%(価値換算)はコンテナ貨物であり、毎年1,200万コンテナ(2000年時点)が船舶や航空機などによって米国へと運ばれている。しかし、セキュリティを強化することは、コスト増加や物流の円滑化の阻害など、デメリットにもつながる。そこで、貿易の円滑化を図るための制度も作られている。

円滑な貿易を目指すAEO(Authorized Economic Operator)

C-TPATやCSIのようなセキュリティ確保はもちろん重要だが、国際物流においては円滑化も大切だ。セキュリティを重視することによって円滑な貿易が阻害されるのであれば、国際物流を停滞させてしまう。そのため、世界税関機構(WCO)は2006年にAEO(Authorizes Economic Operator)の世界標準ガイドラインを定めた。セキュリティ確保やコンプライアンスなど優れた貨物管理体制を有する業者を認定し、物流のセキュリティ強化と効率化に取り組んでもらおうという制度である。その代わり、業者に対しては税関手続きの緩和・簡素化を行う。これにより、セキュリティ確保と貿易の円滑化を両立させようというわけだ。

日本では2007年、世界税関機構で採択されたAEOガイドラインをもとに日本版AEO制度を導入。優良事業者に対する税関手続きの優遇措置、および措置を受けるための資格制度が制定された。2009年には米国との相互承認が実現し、「日本のAEO輸出者からの輸入貨物の検査率の軽減」、「C-TPAT輸入者のサプライチェーン上にある貨物施設を有する日本のAEO事業者に対しては、米国税関による実地調査が軽減される」といった優遇措置が与えられるようになった。これらの優遇措置を得るためには、法令遵守体制の整備と法令遵守規則(コンプライアンス・プログラム)の作成が重要となる。

国際物流で求められるセキュリティ基準

近年では、アメリカ人やヨーロッパ人だけでなく、日本人を人質にしたテロ事件も起こっている。今後は、日本がテロの標的になる可能性も十分に考えられるだろう。EUやアメリカと比較するとセキュリティ基準の国際化には後れを取っている日本だが、こういったセキュリティ対策に重きを置くことで、他社との差別化を図ることが可能となり、企業の信頼も勝ち取れるのではないだろうか。