[連載]Part.1 『警備新報』代表に聞く! 変わりゆく警備業界のいま

セキュリティ

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、民間の警備業界に対するニーズは今まで以上に高まっている。また、近年では、リスクが高まるテロへの警戒など、求められる業務領域も拡大している。

一方、警備員は年々人数が減少傾向にあるのに加え、高齢化も深刻な課題となっている。

今後、警備業界はどう変わっていくのか……。業界紙である『警備新報』を発行する、警備保障新聞新社の増澤滋社長に話を聞いた。

増澤 滋 |ますざわしげる
株式会社警備保障新聞新社 代表取締役
学業終了後、外車輸入販売会社勤務を経て、長く経理畑を歩む。その後、『警備保障新聞新社』の前身となる会社の社主との出会いを機に、同社を事務方として支えるように。先代社主の死去に伴い、2010年11月に『警備保障新聞新社』を設立。その遺志を継ぎ、警備業界の発展に寄与し続けている。

全国の警備業界関係者が愛読

――『警備新報』はどのような方に読まれているのでしょうか。

警備関係の会社の経営者が主な読者ですね。日本全国のほか、韓国や中国など海外の拠点でもご愛読いただいています。また、企業だけでなく、官公庁や警察、消防などでもお読みいただいています。日本では、都心に限らず各都道府県それぞれに警備会社がありまして、2016年7月現在で約9320社、東京だけでも約2000社あります。

1977年に警備業法が成立し、警備業は基本的にこの法案に基づいて運営され、業務の種別ごとに1号~4号に分類されています。1号業務は商業施設や住宅、空港などの巡視・巡回、2号業務はイベント会場や駐車場などでの人や車両の誘導、3号業務は現金や貴金属などの輸送、4号業務は身辺警護。SPと呼ばれる要人の護衛も担っています。

法的には1号業務に含まれますが、ビルや住宅の警備では、監視カメラなどの機械を用いる「機械警備」というものがあります。セコムやALSOKなどの大手企業では、こうした機械警備をメイン事業としながら、1号業務や2号業務など複数のサービスを提供しています。

一方、中小の警備会社は、1号~4号業務のどれかをメインでやっていたり、あるいは複数をカバーしていたりと、会社ごとにそれぞれ得意分野があるというケースが多いですね。

当社は、2010年11月に立ち上げていますが、前身である「警備保障新聞社」という会社から事業を引き継ぐ形でスタートしたため、この時代から考えますと今年で創刊41年になります。ただ、読者が関心のあるテーマは、当時からそれほど変わっていません。やはり所管法である警備業法の改正や、ほかの都道府県の動向や賃金の水準などに関心が高いようですね。これは警備業にかかわらず全国的に言えることですが、警備業でもやはり都心のほうが給料が高く、地方のほうが安いという傾向にあります。

「警察」と「警備業」はどう違う?

――警察の仕事と警備業の業務とは、時に混同されがちですが、どのようにすみ分けられているのでしょうか。

警察は、犯罪が発生した場合に犯人を捕まえるのが役割です。これに対し、警備やセキュリティは、犯罪を未然に防ぐ環境を整えることが仕事です。例えば、自宅に機械警備を導入している方は、住居侵入などの犯罪を防ぐためにこういったセキュリティを導入しているわけです。

警察と警備の最も大きな違いは、犯人が現行犯で逃走の危険性がある場合などを除き、基本的に警備員は犯人を逮捕することができないという点です。さらに、さまざまな法的な制約もあります。例えば、警備員が最も多く出くわすことある犯罪が万引きですが、店内で犯人が商品をポケットに入れても、店を出るまでは万引きとはみなされません。

さらに、今最も業界関係者の頭を一番悩ませているのが、テロに対する対応です。現在、世界的にテロの脅威が高まっているところですが、警備員はテロに対しては無防備だと言わざるを得ません。仮にテロリストが向かって来れば対応はできるのですが、逮捕することができないからです。また、海外の警備員と異なり、日本の警備員は銃を携行しておらず、凶器を持って立ち向かってきた場合は太刀打ちができません。それだけ、これまで日本が平和だった、ということなのかもしれませんが……。幸いなことに、日本ではまだ大規模なテロは発生していませんが、今後凶悪なテロリストに対応していくために、警備員の銃の携行については、日本社会全体で議論をしていくべきかもしれません。

警察官は全国で40~50万人ほどしかいませんし、もし大規模なテロが発生した場合、警察官だけで国民を守りきるのには無理があります。民間の警備会社も協力して、安全・安心を構築していくべきだと考えています。

『警備新報』を発行する、警備保障新聞新社の増澤滋社長に「警備業界のいま」についてお聞きするインタビュー企画の前編をお届けしました。次回は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、警備業界のニーズがどう変化しているのかについてお聞きします。