[連載]Part.2 警備会社が考えるべき「五輪後」の課題とは?

セキュリティ

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、民間の警備業界に対するニーズは今まで以上に高まっている。そんな中、「オリンピック後の警備業界をもっと考えていくべき」と提言しているのが、『警備新報』を発行する、警備保障新聞新社の増澤滋氏だ。

前回に続き、増澤社長に聞いた。

増える警備ニーズ、五輪後はどうなる?

――2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催まであと3年に迫りました。警備上、懸念しているのはどのような点でしょうか。

東京オリンピックの警備に関しては、担当する警備会社が決定したことくらいで、実際にはそれほど動き出していないのが現状です。ただ、開催を見越した警備員の人手不足の問題がすでに浮上しています。

東京オリンピック開催にあたっては、1日につき約1万3000~5000人の民間警備員が必要だと言われています。これは関東やその近隣県の警備会社から集めたとしても、到底足りる数ではありません。これだけの人数を毎日どのように確保していくのかが課題だといえます。大手警備会社では、ドローンや飛行船などの先進技術を活用し、警備を効率化したいという動きもあるようです。

さらに言えば、オリンピックが開催される8月は、日本が最も暑い時期。毎年多くの熱中症患者が救急搬送されています。高温多湿な日本の夏に慣れていない外国人選手が、この環境に耐えられるのかというのも警戒すべきリスクです。

ただ、一方で、私が地方の警備会社の社長さんとお話しする際に伝えているのは、オリンピック後の警備業界をもっと考えていくべき、という点です。現在は、ニーズが高まっている警備業界ですが、今後万博やワールドカップなどの人が集まるイベントは開催される可能性はあるものの、これほど世界中から多くの人が日本に訪れる機会はそうないでしょう。

オリンピック後に警備業が、いかに人々から必要とされていくのか。私は、従来型の交通誘導や施設整備だけでは限界があるのではないかと感じています。もっと地域に密着した仕事をし、新たなニーズを掘り起こしていくべきです。

具体的には、地方の警備業界は、地域の「何でも屋」を目指すべきだと考えています。例えば、地方にはお年寄りの孤独死の問題もありますが、仮に最初は無償でも、警備員が定期的に地域を巡回すれば、会社の名前も広まりますし、地域から信頼される存在になります。

こうした各地域への積極的なアプローチにより、通学路やお祭りなどの警備を頼まれるなど、生活に密着した新たな需要を生み出すことができるのです。すでに地方の警備会社では、地元と連携することで新しいニーズの掘り起こしにつなげているところがあります。

また、今後、警備上考えていかなくてはならないのは、IR(カジノ)の問題です。2016年末に、カジノ法案とも呼ばれる「IR推進法案」が成立しましたが、周辺の治安悪化に対する懸念は払しょくされていません。先行しているシンガポールなど海外の事例と同じようにうまくいくのか、警備上どう対応すべきなのかは頭が痛い問題です。実現するのにはまだ時間がかかりそうですが、今後検討していかなければならない問題だと感じています。

オリンピックを見据え、各地で様々なイベントが催されることでしょう。こうなると、警備業界としては、地域の雑踏警備のニーズが増えていくのではないでしょうか。警備業界としては求められる仕事は増えていくと考えています。人手不足をハード面でカバーしようと、新たな機械の開発は進んでいるようです。ただ、特に雑踏警備では、機械の監視だけでは乗り越えられない部分もあります。機械警備にできない点は警備員が今まで通りに担っていく必要があるでしょう。

――防犯カメラなどの設備について、どんな商品が売れているのでしょうか。

警備員の制服については、警備業法で所管の警察に届け出をしないといけないことになっているのですが、数年に一度はリニューアルがありますので、切り替えのタイミングで大きく動く商品ですね。また、制服とともに、相手が凶器を持っていた場合に応戦するような、江戸時代に使われていた「十手」のような商品も出されています。こうした制服と一緒に携行する道具も、リニューアルのタイミングで刷新されるケースがあります。

防犯カメラについては、この10年で画質など技術面が大きく進歩しました。最近では、カメラの前を通るだけで、大体の年齢が識別できるといった機能を備えているものもあります。ただ、防犯カメラは、各社がしのぎをけずって開発に臨んでいるため、市場の競争は激化していると思います。

『警備新報』を発行する、警備保障新聞新社の増澤滋社長に「警備業界のいま」についてお聞きするインタビュー企画の中編をお届けしました。最終回では、気になる「警備員の人手不足問題」をテーマに語っていただきます。