[連載]Part.3 警備員の人手不足は解消されるのか?

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年々人数が減少傾向にあるのに加え、高齢化も深刻な課題となっている警備員。当サイトの記事「警備員の人手不足問題を考える」も大きな反響を呼び、注目を集める人手不足問題だが、『警備新報』を発行する警備保障新聞新社の増澤滋氏はどう考えているのだろうか。

深刻な人手不足、海外からも人材確保を

――警備業界の抱える課題とはどのような点でしょうか。

やはり人手不足の問題が最も大きい問題です。警備の仕事は増え続けているのですが、人手が足りないので仕事を断ったり、提携している別の会社に回したりといったケースも少なくありません。警備業法で、ほかの警備会社から警備員の応援を頼む行為は禁止されているため、自社で担当しきれなければ、他社に回すしかないのが現状なのです。

以前はアルバイトの警備員を雇用していたこともありますが、現在は基本的に社員として雇っています。ただ、今年4月からは、一定の基準を満たした従業員に対し、社会保険に加入させることが義務化され、未加入の場合は一部受注が制限されるなど、規制が厳しくなります。警備員は非常にリスクの高い業種にもかかわらず、これまで社会保険に未加入の企業が多かったというのが実態なのです。このため、今まで社会保険に未加入で、多くの警備員を雇っている警備会社にとっては、大幅なコスト増となってしまうでしょう。

さらに、警備員の高齢化も進んでいます。警備の仕事は若者に人気がなく、定年退職後の方が再就職先として選ぶケースが多いのです。このため、現在は60歳以上の方が41%占めています。おそらく、この割合は減っていくことはなく、あと4、5年は高齢化の傾向が続くのでしょうね。

日本の人口減少や少子高齢化を考えると、私はこの警備員不足を、日本だけで解決するのには限界があると感じています。やはり、外国からも応援してもらう方向を考えるべきです。警備業界は、基本的には外国人受け入れOKですが、資格や言葉の問題などがあり、受け入れは進んでいないのが実態です。私は今こそ、警備業界が外国人受け入れについて積極的に考えるべき時期が来たと考えています。

実は2016年11月に、インドネシアにある職業学校を訪問しました。この学校では、将来日本に出稼ぎに出られるように、建築業や建設業など分野ごとに、日本語で授業をしています。実際にこの学校からは年間50人ほどが日本に出稼ぎに来ているようです。現在は警備業に関する授業は行われていないのですが、この学校のトップの方に、「警備業でも雇い入れるような形でお願いしたい」というお話をしたところ、先方も大変協力的でした。

アジア圏では、若い方の仕事がまだまだ足りません。また、タイやベトナムでは、地方に行くと信号が少ないところも多く、民間人が交通誘導をしているケースも少なくありません。国にもよりますが、実は海外は日本に比べて民間の警備会社が少なく、国や警察が直接警備に当たっているケースが多いのです。日本で警備員として働くことで、雇用につながるのはもちろんですが、日本で警備について学んでから帰国すれば、今後、現地で新しい仕事が生まれるということにもつながります。

日本の警備業の課題に話を戻すと、近年は、警備に求められるものが多くなっています。例えば、2015年に警備業法が改正され、プール監視も警備業に含まれるということになりました。プール監視については、元々は警備会社ではなく、プール業界の人たちが自主的に監視をするということになっていました。ところが、当時プールで遊んでいたお子さんが亡くなるという事件が相次いだため、法改正がなされることになりました。

ただ、今警備業ではなかなかこういった仕事のやり手がありません。プールでは、事故がとても起こりやすいもの。もし万が一、警備中にお子様がなくなった場合、それは警備会社の責任になります。

増え続け、さらに多様化していく警備ニーズを抱える一方で、人手不足の問題をどう解決していくかが大きな課題だと言えます。

業界内で進む「働き方改革」

――警備員を確保していくため、各社の待遇改善策は進んでいるのでしょうか。

そもそも、このような人手不足を招いた背景には、かつて警備員のアルバイト料金が悪すぎたという点があります。私がこの業界に入った当初も、タクシー運転手やパチンコ業界などと同様、警備員は「薄給激務」という印象が強く、やりたがらない人が多かった。このような時代が長く続いたために、警備員に対するイメージが悪くなってしまったということがあります。

現在、政府も「働き方改革」に注力していますが、警備業界内でも現状を打開しようと、従業員に対する待遇改善に動き出している企業があります。給料の見直しはもちろんですが、社員のために厚生施設を充実させるといった取り組みも徐々に広まってきているようです。

建築業、運送業とも連携を

――今後警備業界が変わっていくためにはどのような点が必要だとお考えでしょうか。

戸を広げようという取り組みも始まっています。例えば、これまでは業界団体である「警備業協会」に入会しないと警備業の資格が取れないという仕組みになっていましたが、2年半ほど前から、協会に入らなくても資格を取得できるようになるという、新たな仕組みも動き出しています。これは「警備人材育成センター」という法人が担当しています。

現場レベルでは、業種的に近しい人たちとユニオンを組むべきだと考えています。例えば、大手ビルのメンテナンスを担っている「ビルメンテナンス協会」というのもありますが、そちらも警備業界と同様、人手不足で悩んでいます。警備業はビルメンテナンスも関連しているので、もっと連携して仕事に当たれば、効率化できる部分はかなりあると思います。

さらに言えば、建築や輸送業界と、警備業界は、もっと連携できる可能性があると考えています。実は私もかつて、建設と警備業界が連携して業務に取り組むことができないか、模索したこともあったのですが、所管官庁が異なっていたり、規制を受ける法令も異なっていたりと、なかなか難しい面がありました。ただ、業務に関しては連動している点もあり、連携することで効率化につなげていくべきだと考えています。

――本日はお忙しいなかありがとうございました。