ウェアラブル端末は物流工場の現場をどう変える?

テクノロジー

物流工場の作業効率化は永遠の課題。近年は「スマートウォッチ」や「スマートグラス」をはじめとするウェアラブル端末を利用した作業効率化の実験も行われており、作業現場や日常生活での活用もすでに始まっている。そこで今回は、これらをはじめとするウェアラブル端末の取り組み事例を紹介する。

ウェアラブル端末とは?

ウェアラブル端末とは、自身の体に装着して利用する情報端末を意味する。最近では、移動距離や消費カロリー、歩数などを計測できる時計型のウェアラブル端末「スマートウォッチ」も一般化しており、生活習慣改善を目的に購入する消費者も増えている。こういったウェアラブル端末を利用するメリットとしては、小型・軽量化されているため意識せずに装着できる点が真っ先に挙げられるだろう。

また、作業現場においてもウェアラブル端末のメリットは大きい。従来であれば指示書を確認したり、タブレットやパソコンなどの端末でメールを開いたりする必要があったが、メガネ型のウェアラブル端末「スマートグラス」を使用すれば、手がふさがっている状態でもグラス上に表示される指示を見たり、音声を聞いたりすることができる。現地で作業員が見ている風景をウェアラブル端末から送信することができれば、技術者が遠隔地にいる場合でも的確な指示を出すことができるだろう。こういったウェアラブル端末の技術が進歩すれば、物流業界でも作業効率化を図ることができる。

近年は、テレパシージャパン社がスマートグラス「Telepathy Jumper」を開発。ユーザー同士の視線をワンクリックで交換できる機能や、空き時間を使ってユーザーが知識やスキル、体験などを共有できる2種のアプリを搭載している。これにより、新人研修やサービス向上への活用など、さまざまな応用ができるという。

スマートグラスの作業現場への活用例

これまで行われたことのあるエンタープライズ領域でのウェアラブル端末の活用例としては、以下のようなものが挙げられる。

2014年、日本航空と野村総合研究所が共同で、米ホノルル国際空港においてスマートグラス「Google Glass」を活用した機体整備の実証実験を行った。従来、整備スタッフは電話やメールによる指示を受けるか紙の指示書を見る必要があったが、この実証実験ではGoogle Glassのカメラ機能や情報伝達機能を生かし、遠隔地にいる整備スタッフへの支援を行うとともに、スタッフにハンズフリー環境を与え作業効率化や負担軽減を図った。また、羽田空港の搭乗ゲートの勤務スタッフにスマートウォッチを着用させ、業務指示やスタッフの位置把握などを行うといった実験も行った。これらのウェアラブル端末が本格的に使用できるようになれば、現場で働く人間もより円滑なサービスを行えるようになるだろう。

また、ムラタシステム社では手術準備の支援システムとして、「スマートグラス」を販売。手術で必要となる医療材料をそろえる際にこのウェアラブル端末を使用し、保管場所や棚番号などを表示させるといったシステムだ。これにより、従来看護師が担当していた作業を派遣社員が担当できるようになり、日本赤十字社京都第二赤十字病院では看護師の作業軽減が可能になったという。

新たな技術開発が進む、ウェアラブル端末

飛行機の機体整備のように、現場によっては手が汚れてしまってメモを取るのが難しい、端末の操作がしづらいといった環境がある。そんなとき、スマートグラスがあればタスクリストによって点検漏れを防いだり、点検の結果報告や記録をしたりといった、作業効率化を図ることができるだろう。こういったウェアラブル端末技術は日々進化している。

例えば、三菱電機が開発したゴーグル型の「スマートグラス」は、AR技術を利用してビルや発電所といったインフラのメンテナンス作業を簡略化し、作業員の負担軽減とミスを抑制することを目的としている。作業員が端末を装着すると点検箇所と順序を表示し、点検漏れを防いでくれるのだ。点検結果が正常値と異なっている場合や点検漏れがある場合には、システムが音声で再確認を促し、ミスを防ぐようになっている。

また、富士通が開発したグローブ型のウェアラブル端末もユニークだ。これは、手が使えない作業中でもジェスチャーによって作業内容を記録できるようにし、作業効率化を図っている。手が汚れてしまい端末の操作が困難な現場では、操作のために作業を中断してしまうことも多い。そこで富士通はジェスチャー入力機能を備えたグローブを開発。コネクタや作業パネルに張り付けられたNFCタグに触れるだけで作業に必要な手順を表示したり、手首を曲げるだけで作業結果を入力したりできるという。

ウェアラブル端末が人と物流現場をつなぐ

複雑な作業をする場合、ちょっとしたミスが大きなトラブルを招くこともある。工場や配達など働く場所がさまざまな物流業界でも、同様のことがいえるだろう。しかし、ウェアラブル端末が発展すれば、遠隔地で働く作業員とのコミュニケーションも可能となり、研修や作業内容の確認なども行えるようになる。ウェアラブル端末は、人と物流現場をつなぐ懸け橋になりえる存在なのかもしれない。