米国におけるトラック貨物盗難の近年の傾向

物流

前回に引き続き、海外におけるトラック貨物盗難の現況についてお伝えする。今回は、米国における状況を詳しく見てみよう。近年の貨物盗難の傾向と、2015年から2016年の被害の動向について紹介する。

米国における貨物盗難の傾向

盗難ターゲットの変化

2008年の世界的金融危機以降、盗難のターゲットが高額な電子機器から、ナッツやエナジードリンク、魚介類といった食料品や飲料水へシフトした。

盗品は売らなければ話にならない。この傾向は、高額な商品よりも低額な商品のほうが売りやすいという今の時勢を反映していると考えられる。さらに、食料品や飲料水はすぐに消費されてしまうので、短期間のうちに証拠品が消失するというメリットもあるようだ。

戦略的盗難の出現

2011年から2012年にかけては、戦略的な盗難が出現。貨物盗難は、犯罪者にとって低コストで見返りが大きいという面があり、知的犯罪者を引き寄せているという。

もちろん現在でも、トレーラーをこっそりけん引していってしまうようなストレートなやり方での貨物盗難は多いが、そのほかに、身元詐称、架空の運送会社、虚偽の集荷などを組み込んだ戦略的ともいうべき盗難が増加しつつあるのだ。

例えば、なりすましの場合には、正規のトラック運送会社として積荷を予約し、集荷し、そしてそのまま消えてしまう。虚偽の集荷では、正規のトラック運送会社によって集荷される予定の荷物を見つけ出し、集荷予定時間の2時間くらいまえに現れて、予定より早いがと言って荷物を持って行ってしまうようなことが起きている。

テクノロジーを活用したサイバー犯罪の増加

最新の傾向は、テクノロジーを活用した盗難である。サイバー犯罪の関与が増加しているのだ。

トラッキングデバイスが導入されていても、デバイスを見つけ出して取り除いてしまうケースも。なかには、3Dプリンターを用いて作った封の複製を使ったケースもある。扉の封を破って積み荷の一部を取り出し、にせの封で再度閉じてあったものだ。

貨物盗難から消えた「季節性」

そして、2014年くらいから貨物の盗難は年間を通して発生するようになっている。

貨物の盗難の発生頻度にはもともとは季節性があり、クリスマス用の荷が動き出す9月1日から用心しなければならないものだったのが、2014年くらいから、そうともいえない状況になってきており、現在では特に貨物盗難が多発する時期というものはなくなっている。

これは、クリスマスシーズンもそれほど用心する必要がなくなったということではなく、クリスマスシーズンだけではなく、一年中用心が必要になったということを意味している。

2016年の貨物盗難の被害の動向

FBIは貨物盗難の年間被害額を150~300億ドルと見積もっている。

物流セキュリティサービス事業者であるFreightWatch Internationalが受けた盗難報告の内容を見てみよう。

2016年第3四半期に発生した貨物盗難は193件、1件当たりの平均被害額は約12万ドル。これは、2016年第2四半期に比較して、発生件数が14%増加しているが、平均被害額は26%減少している。

2015年の第3四半期と比較してみると、発生件数の増加率は7%、平均被害額は38%減少しているが、被害総額が100万ドルを超える盗難は、2015年の第3四半期に2件、2016年第2四半期に2件だったが、2016年第3四半期には5件発生している。

一方、貨物盗難の回収サービス事業者であるCargoNetは、2016年第3四半期に受けた盗難報告は447件であり、2015年の第3四半期と比較すると、2%の増加であるということだ。

2016年第3四半期の被害総額は、2,370万ドルであり、2015年の第3四半期を比較すると820万ドル減少し、平均被害額も2015年第3四半期の14.4万ドルから2016年第3四半期には11.8万ドルに減少している。

CargoNetが受けた報告においても、100万ドルを超える盗難は2016年第3四半期に6件発生している。2015年の第3四半期に5件であったが、そのうちの2件は、700万ドルと570万ドルと大変に大きな盗難であったという。

まとめ

FBIによれば年に被害総額が150~300億ドルにのぼるとされる米国での貨物盗難は、ITの進化のあと押しを受けて、戦略的盗難が増えているという。さばきやすい比較的廉価な食料品や飲料水にターゲットがシフトしているのを反映して、平均被害額は減少傾向にあるが、被害件数は増加している。また、100万ドルを超えるような被害件数も決して減ってはおらず、問題が複雑化しているといえよう。

今後も引き続き、海外における盗難状況やそのトレンドをフォローしていきたい。