さまざまな業界で話題となっている「IOT」。
これは「Internet Of Things」の略称で「モノのインターネット」と訳される。
物流業界で注目されている分野の一つだ。
IOTの浸透は、課題だらけの物流業界をどう変えていくのか。
それらを説明するには、IOTがもたらすインパクトに着目する必要がある。
そもそも「IOT」とは?
IOTとひとくちに言っても、どのような技術が現在使用されているのか、パッと思い浮かばない人もいるだろう。
近年では、パソコンや携帯電話がインターネットにアクセスできるのは当たり前だが、そうしたデバイスだけでなく、すべてのモノがネットとリンクできるようにするのがIOTだ。
そしてこれは、生活やビジネスを根底から変えることが可能となる技術なのだ。
それでは、ここでIOTの具体例について解説しよう。
例えば、冷蔵庫のIOT化は耳に新しい話題。
「スマート冷蔵庫」とも呼ばれ、冷蔵庫の中身をスマートフォンで共有したり賞味期限の近い商品をユーザーに知らせたりといった機能があり、冷蔵庫の中身で作れるレシピ検索まで行うことができる。
また、IOT化は冷蔵庫に限らず、炊飯器やエアコンといったほかの家電でも広がっている。
これまでは人が判断していたことを、モノがインターネットにリンクし独自に判断・通知してくれる。
それだけで、私たちの暮らしはいまよりもずっと豊かになるだろう。
かつては漫画や近未来映画の世界にだけ存在していた技術が、少しずつ現実味を増し実生活で利用できるレベルにまで達しているといえる。
こういったシステムは生活に関わる部分だけでなく、物流業界にも大きな影響を与えると考えられる。
IOTが物流業界に与えるインパクト
では、実際に物流業界のIOT化でどのような効果が得られるのだろうか。
まず、先述したIOT化冷蔵庫のように、倉庫内にある商品名・製造番号・品数などの管理(在庫管理)。
そして、保管場所や商品の状態(食品の場合は、温度・湿度・賞味期限など)や移動状況の確認などが挙げられる。
段ボールごとにデバイスを取り付け、そこから情報を発信できるようにすれば、人の手を使わずともこういった作業をリアルタイムで行うことができるようになる。
現在は、温度チェックや在庫管理などを人材によりまかなっている企業が多数だが、IOT化によってそれらが自動登録されるようになり、労働者の負担を大きく軽減できるというわけだ。
人手不足や再配達問題などさまざまな問題を抱える物流業界だが、いずれはIOTの浸透により物流センターが無人となる日がやってくるのかもしれない。
NECが手がけるモノのインターネット化
世界から注目されるIOT。NECでは、すでに倉庫管理システムやデバイスの低負荷通信技術開発など、IOTに積極的な姿勢を見せている。
具体的に進められているのは、以下の3項目だ。
IOTデバイスを低負荷でモバイルネットワークに接続できる技術
倉庫管理システム
国際輸送での統合可視化を実現するサービス
まず一つ目の低負荷通信技術は、IOTで使用するデバイスをネットワークに接続させる際、それぞれの特性や状況に合わせて制御信号を削減し、ネットワーク負荷を低減させる通信技術のことを指す。
現在は、携帯や車のナビゲーションなどネットワークに接続可能な端末がたくさんあるが、IOTがこれまで以上に普及すれば不要な制御信号が増加し、ネットワークの負荷が増大する可能性がある。
そのため、IOTデバイス専用の通信技術を開発し、それぞれの移動速度や位置などに合わせた最適な環境を整えようというものだ。
二番目に挙げた倉庫管理システムは、先述したリアルタイムでの在庫管理を可能とする技術だ。
倉庫管理に必要な機能を提供してくれるシステムであり、無線機とデータ連携させて可視化するだけでなく、作業プロセスや作業員の生産性も分析することが可能となっている。
そのため、より効率的・実践的なマネジメントが可能となる。
最後の国際輸送での統合可視化実現サービスは、グローバルな物流におけるクラウドサービスを指している。
これは、ビジネスのグローバル化に伴い世界規模での物流が増えていることを背景に作られたサービスだ。
現在は、物の輸送状況を確認するためには個別に海外の企業へ問い合わせが必要だが、そうした情報をクラウドサービスで共有・可視化することで物の流れを把握しやすくするというものだ。
こういったIOTに関わる技術やサービスが充実すれば、課題だらけの物流業界も大きく変わるのではないだろうか。
課題だらけの物流をIOTが大きく変える
商品・在庫の状態を情報化し、可視化できるIOTの導入により作業効率も上がれば、物流業界でも大幅なコスト削減や利益増加にもつながる。
今後は、世界の物流業界でデジタル化が“当たり前”となり、成長の大きな起爆剤となる可能性も考えられるだろう。