トレーサビリティーを高めることは、低コストで物の移動・保管におけるリスクを軽減する代表的な方法だ。
そのために、現在はさまざまな業界でRFIDの導入が進んでいる。
今回は、物流業界におけるRFIDタグを活用した防犯対策の事例を紹介する。
RFIDとは?
まず、RFIDについておさらいをしておこう。
RFID(Radio Frequency Identification)は、タグと呼ばれるものと読み取りデバイスの間で無線通信によって情報をやりとりする技術で、個々の物品を識別し、追跡することを可能にするテクノロジー。
タグはごく小さなチップで、さまざまなデジタル情報が含まれる。
物品のパッケージやパレット、コンテナ、あるいは配送トラックやバンなど、さまざまな箇所につけることが可能だ。
RFIDの利用目的は多様だ。
例えば、生産管理では生産リードタイムの短縮に、在庫管理では適切な在庫量の維持に、それから保存期間の短いものの在庫管理にも役立つ。
管理区域の出入り口に読み取り機を設置しておき、許可なく物品が運び出されないようにすることもできる。
このように利点が多いことから、現在では導入コストの低下に伴い、多様な在庫を持つ卸業者や小売業者のほか、製造業や物流業でも導入が始まっている。
RFIDタグの導入で効率化とセキュリティ強化を実現
Asia Airfreight Terminal Co Ltd(AAT)は香港国際空港の航空貨物ターミナルの運営会社だ。
年間150万トンにのぼる取扱貨物量に対応するため、RFIDタグを利用した貨物車両の管理システムを導入し、効率的な車両入退場や迅速な配送を実現した。
車両の待ち時間が軽減されただけではなく、セキュリティの強化にもつながっているところがポイントといえる。
ターミナル内では、i-Passと呼ばれるRFIDタグが用いられている。
i-Passには車両ナンバー、会社名、ドライバー、連絡先などの情報が含まれており、これがなければ車両はターミナルに入れないようになっている。
つまり、ターミナル内ではi-Passによってすべての車両が識別されており、不審者の侵入を防いでいるのだ。
例えば、アクセスに制限がある場所への無断侵入があったときはアラート機能でAATに連絡がいくようになっており、リアルタイムの自動監視でセキュリティコントロールを強化している。
NYK Logistics のトラックヤードにおけるRFID導入例
2つ目の事例として、食料品からコンピューターソフトウエアまでありとあらゆる商品の流通を扱っているNYK Logisticsを取り上げてみよう。
カリフォルニアのロングビーチにあるNYK Logisticsの流通センターでは、トラックヤードのゲートを出入りするインバウンドの海上コンテナは年間に50,000以上、アウトバウンドのトレーラーも年間に30,000以上にのぼる。
RFIDを利用したシステムの導入前は、NYKの従業員がトラック到着時に、貨物の内容やどこへ降ろすのかなどの情報を管理システムにマニュアルで入力していた。
しかし、貨物を降ろすべき場所に空きがなく、実際には指定とは異なった場所に貨物が降ろされることも頻繁にあり、かなり混乱する状況にあったようだ。
新システム導入後はトラックヤード内に35の読み取り機が設置され、1100の駐車スペース、250のドックドアの管理が可能となった。
タグから発せられる信号を追うことによって、28万平方メートル(東京ドーム6個分)の広さを誇るトラックヤード内において、3メートル以内の誤差でリアルタイムに貨物の場所をフォローできるようになったとのことだ。
RFIDは効率化とセキュリティ強化の二人三脚が強み
RFIDの個々の物品の動きを正確にトレースできるという機能には、まだ多くの利用の可能性が秘められているといえる。
意外なところで、家畜管理にも用いられ効果が上がっているという。
物流業界でもさまざまな工程での効率化が図れるだけではなく、セキュリティの強化につながるのは大きな利点だろう。
今後さらに多くの場面でRFIDタグガ導入されると予想される。