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[連載]Part.3 セキュリティ強化をビジネスチャンスに変えるには?

[連載]Part.3 セキュリティ強化をビジネスチャンスに変えるには?

シリーズ連載

海外荷主と取引のある企業を中心に、日本でも徐々に関心が高まってきたTAPA認証。
セキュリティ対策強化をビジネスチャンスへとつなげるために、どのような課題があるのだろうか。
Part.1、Part.2に引き続き、TAPAアジア日本支部の浅生成彦理事長に聞いた。

医薬品系企業で高まるTAPA認証の取得要求

――セキュリティ強化に取り組むことで、新たなビジネスチャンスを得ている例がありましたら教えてください。

輸入品を扱う場合、TAPA認証を取得しセキュリティを強化していることは、同業他社と比べて大きな差別化につながるのは間違いないでしょう。

今、日本企業に対してTAPA認証取得を求める声が最も大きいのは、やはり外資系企業です。なかでも医薬品系の声は大きい。また、国際物流を手がけている企業としては、TAPAは“当たり前に取得すべきもの”なんです。彼らにとっては、それだけポピュラーな存在だといえます。

さらに、当然ですが、現金輸送など価値が高いものの物流に対しては、安全性への期待が高いですから、セキュリティを強化することで同業他社と差別化し、受注につなげている例もあると聞きます。

――ボトルネックになっているのはどのような部分でしょうか。

TAPA認証の取得について、多くの日本の荷主が要求しておらず、国が規則として導入すべきという指導もしていないところにあると思います。日本には物流セキュリティの基準がないのが問題ですね。

アメリカでは、一部の保険会社でTAPA認証を取得しているなどセキュリティを確保している企業に対し、施設の保険料を安くするという取り組みもあります。こういう取り組みは、導入の契機としてはよいきっかけになるかもしれません。

ただ、今後もっとTAPA認証が拡大していくためには、荷主の意識や考えも変わらないといけないでしょうね。日本では、荷主への見積もりのなかに、セキュリティに関するコストが入っておらず、セキュリティ強化にかかる費用を物流コストとして転嫁しにくい。逆に言えば、ISOのように「当然取得すべきもの」というようになれば、大きく変わってくると思います。

ちなみにISOとTAPAの違いについてよく聞かれるのですが、ISOは規則を守っているかどうかという書類上の審査が主で、ほとんど現場での審査はありません。TAPAはセキュリティ機器等のオペレーション審査ですので、実際にアラームが鳴ったのか、監視カメラに死角がないかなどを現場で審査します。ここが全く違う点ですね。実際に行われている機器の作動状況を審査しますので、非常に実用的ですね。ただ、だからこそお金がかかってしまう。イニシャルコストが結構かかるので、導入に二の足を踏んでしまう企業もあります。

日本には安全神話があり、「盗難されるはずない」という性善説に立ってものを見ている企業が大変多いことも認証取得が進まない大きな要因です。外国との取引がある会社ですら安全神話を抱き続ける企業が多く、世界の常識とは大きくかけ離れてしまっています。しかし、前編でも申しあげたとおり、実態が見えないだけで、盗難事件が起きていないわけではないのです。

衛生面の安全基準と混同しない

――食品メーカーのなかでも、一時期相次いだ異物混入問題などを防ぐため、セキュリティに力を入れようという企業が増えていると聞きます。

生産拠点を海外に移した企業のなかには、現地従業員への対応など、セキュリティに関心が集まっています。ただ、「日本人だから安全」「外国人だから危ない」ということではなく、誰がやっても同じようにセキュリティが担保できる仕組みがTAPA認証です。

そもそも食品安全の場合、セキュリティには、①原料や製造工程での安全、②倉庫での保管およびその後の輸送時の安全、の2種類があり、これが混同されがちです。①はJAS法やHACCPで衛生管理の基準が定められており、ここ数年で実施されるようになってきましたが、②の保管・輸送時のセキュリティに関してはまだ認知や取り組みが進んでいないのが現状です。監視カメラを設置している企業も多いですが、正しく設置されているかどうかの評価は第三者ではなく自社に頼っている場合も多く、完璧とは言えません。

この点、海外では、例えば従業員1人で作業させるとリスクが高まるので、2人以上で作業させるという規則があるところもあります。

食品衛生もHACCPが普及するまでに約13年かかりましたから、食品の保管・輸送のセキュリティ導入にもかなりの時間がかかってしまうのではないかと危惧しています。しかし、大きな事故が起こってからでは遅い。今こそ、未来を見据えたセキュリティ対策に取り組むべきタイミングなのではないでしょうか。

――非常に重要な問題提起をしていただきました。本日はお忙しい中ありがとうございました。

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