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アパレル業界の物流事情

アパレル業界の物流事情

ここ5年ほどでアパレル業界における物流事情は大きく様変わりしました。EC業者の台頭、ドライバーの不足、低コスト化の波など従来の物流システムではインフラを支えることが難しくなっています。今回は現状とそれに対して行われている施策をご紹介します。

アパレル業界物流の現状

現在のアパレル業界物流は、配送のニーズとそれに対応できる物流業者の絶対数のバランスが崩れたことで大きな転換期を迎えています。EC 業者の台頭とドライバー不足が運送業者に高負荷低利益を強いる状態となり、現状に反発する運送業者も増えているのです。難しい現状について考察してみます。

EC業者の台頭とネットショッピングの拡大

スマートフォンやタブレットが普及し一般の人が自宅にいながらショッピングを楽しむことが、ここ5年ほどで随分一般的になりました。楽天や Amazon のような大手総合 EC サイト、メルカリ等の個人売買サイト、ZOZOTOWN のようなアパレル通販は個人向けの購買ニーズに合わせて作られています。

ショッピングはネット上のECサイトでデジタルデバイスを使用して楽しむことができますが、実際に商品を運搬するのはアナログな運送業者です。商品の購入が便利になりシェアが拡大したため、運送業自体のニーズは爆発的に伸びています。

しかし、Amazon のような大手 EC サイトでは配送料を非常に安く設定しており、それを業者に負担を強いるビジネスモデルになっているため業界からは反発もあります。実際に佐川急便やヤマト運輸は「コストがかかる割に価格が安い」という状況を嫌い、Amazon の配送から撤退しました。

ドライバー不足

運送業界全般に言えることですが、ドライバー不足は深刻です。若い人が運転免許を取らなくなっているため、ましてや中型大型トラックの運転手募集は苦労している会社が非常に多いです。業界によっては普通自動車免許で運転できるトラックを導入し、ドライバーの雇用を促進しようという動きがあります。しかし、アパレル業界物流に関しては、積み込む荷物の積載量が多い上に、スペース的にかさむ商品を多く取り扱うため、従来の中型・大型トラックでないと厳しい面があります。

都内の細い道路事情

また、アパレル運送に関しては配送する場所が必ずしもスペースを使えるとは限らず、都内だと特に狭い路地や奥に入り込んだ場所への配送が多いためドライバーにとってはハードルが高いです。また、狭いスペースのなか短時間で積込作業を終わらせないといけないため、体力的・精神的にも負担を強いることになります。

進むテクノロジーと物流効率化

前項のような問題点を解消すべく、アパレル物流の世界ではテクノロジーによる自動化や、規格の統一による物流の効率化が進んでいます。どのような事例があるのかご紹介します。

日立の棚運搬ロボット Racrew

日立が開発した棚運搬ロボット Racrew はアパレル物流倉庫でのピッキングや商品検索の労力を大幅に下げることができます。従来の倉庫は商品棚に人が歩いていき、リストを見ながら該当の商品棚から商品を運んでくるという仕組みになっていました。しかし Racrew を使うことで、棚が人のいる場所に自動で運ばれてくるという構図に変化し、労力を軽減し人件費を下げることに成功しました。

AI で在庫管理

物流の量および件数が膨大になった今、人の手で行なっていた在庫管理とストックを配置する場所の選定を自動化する動きが出ています。AI 在庫管理です。

AI によって自社が提携している EC サイトの注文状況と社内の在庫データベース、各物流拠点の状況を統合し、自動で最適な選択が可能です。人の手で行うとどうしてもミスが出てしまう在庫管理や棚卸し作業ですが、AI で自動化することで大幅に効率化します。

ハンガー車で積載量を増やす

アナログ面ではラックに入れて積載していた衣類をハンガーに吊るした状態で運搬するハンガー車も一定の人気があります。開梱作業が必要なく、洋服にシワがつかないということでアパレル業者からの支持を集め、積載量がラックよりも多く詰め込むことができるためドライバー不足、コスト削減の流れにも対応できるのです。

ダンボールのサイズを統一化

またダンボールで梱包して運搬する場合に、箱の規格の違いから積み降ろしの際の効率が悪くなるという問題がありました。人材難、コスト削減の流れを受けてダンボールの規格を統一し、運搬の労力を減らすという動きも出ています。

スマートデバイスを活用した改善例

スマホやタブレット PC などのスマートデバイスを使って、アパレル物流の現場で業務効率化を実現している例で多いのがピッキング作業です。これまでのピッキング作業は目視でタグを確認してから PC にデータを入力するという 2 つの作業が必要でした。しかし、スマホのカメラ機能でタグを読み込むだけで検品作業が終了できるようになりました。読み込まれたデータはシステムに送信され、在庫データベースに書き込まれます。現場での人件費削減、作業負担軽減に役立っています。

まとめ

アパレル業界にとって物流は命綱ですが、消費者行動の変化を受けてアナログな物流業界も変わらなければならないタイミングが訪れています。システムと現場の両面から業務効率化を図っていくために、AI やスマートデバイスの導入は一層進みそうです。

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