東京オリンピックには約5万人の警備体制が必要になるとも言われており、そのうち1万4千人は民間警備員が占めるという。
つまり、「警備員特需」が発生するであろう状況なのだ。
だが、警備員は慢性的な人手不足で、その人数は今後も下降の一途をたどると予測されている。
その原因はどういった部分にあるのだろうか。
需要はたくさんある警備員。だが、供給は…
冒頭で述べたように、東京オリンピックに向けて大きな警備員需要が発生しつつある。
それだけでなく、経済産業省が発表した「第3次産業活動指数」の情報を見ても、警備業は第3次産業全体を上回るベースで右肩上がりの成長を続けている。
その背景としては、警備の家庭向けサービスが一般的なものになってきたことが理由として挙げられる。
「ホームセキュリティー」というフレーズを耳にしたことのある方も多いだろう。
警備員になる条件は、「年齢上限なし」「学歴不問」というケースが多く、ほかの業界と比べると就職のハードルは圧倒的に低い。
それにもかかわらず、警備員は常に人手不足であるといわれている。その原因はどのような部分にあるのだろうか?
警備員が人手不足となっているのは待遇が原因?
人手不足の理由としてまず挙げられるのは、金銭的な待遇の悪さだ。
警備員は非正規の雇用形態が主流であるため、「1勤務あたりいくら」という給与計算がされ、昇給や賞与は無しという場合が多い。
どれほど勤続年数が長くなっても、同じ現場ならば基本的に報酬は同じなのだ。
そのため、「生活ができない」「待遇の改善が期待できない」という理由から、この仕事に見切りをつけて辞めてしまう人が多い。
また、人員不足となっている状態で会社が業績を上げるには、作業員1人当たりの業務時間を増やすしかない。
そうなると、健康を害するような長時間勤務、連勤なども発生し、結果的に体調を崩すケースも増加してしまう。
加えて、作業員がそのような状況に置かれているために後輩を育成する余裕がなく、新しくスタッフが入ってきても十分な教育を受けさせることができないというのも、人が定着しない理由のひとつとして挙げられるだろう。
このような複数の要因が関係し、警備員は慢性的な人手不足となっているのだ。
テクノロジーを活用した解決策
このような状況を、一朝一夕に改善していくことは難しい。
だからこそ、人間に頼ったセキュリティーだけではなく、テクノロジーを活用した解決策を模索していく必要がある。
まず考えられるのは、警備員の代わりに監視カメラを配置するという方法だ。
設置のための初期費用こそ必要になるものの、一度取り付ければ、人を配備するよりも圧倒的に安価なコストで監視をすることができる。
「トラブルが起きないか不安だけれど、警備員を配置するのはちょっとコストが高すぎる」という場合は設置することを考えてみるとよいだろう。
また、それ以外にも警戒エリアに入った侵入者をセンサーが検知すると、警報音を鳴らしたり、光で照らしたりして警告する監視装置もある。
目的や投資可能な金額などに応じて使い分けたい。
それだけでなく、警備員の手配や出退勤管理、勤務実績管理そのものをシステムによって効率化してくれる製品も登場している。
警備業では通常、そうした管理業務はホワイトボードと電話連絡により実施することが多い。
そのため、記入ミスによる人員配置ミスや、電話対応のために人員のリソースが割かれてしまうという問題があった。
その状況がテクノロジーによって解決されれば、警備業の労働環境も改善されていくだろう。
終わりに
警備員の人数が増えてくれればそれがベストだが、人手不足の原因となっている待遇の問題をすぐに改善することは難しい。
人に頼るだけのセキュリティーでは限界があるため、テクノロジーをうまく活用することが求められている。