デジタル技術の進歩により画像の鮮明さも増し、個人の特定や不審物の検知も行えるようになった画像分析技術。
犯罪捜査では監視カメラの画像が証拠となるケースも多く、犯人検挙にも役立っている。
近年ではコンピューター技術の進歩によって画像の“意味”を認識することも可能となり、生体認証でも応用されている。
「指紋認証」や「顔認証」などは、スマートフォンやパソコンなどでも使用されるようになり、
画像分析技術をより身近に感じられるようになったのではないだろうか。
今回は、こういった画像分析の最新技術をピックアップする。
画像分析技術の最新技術とは?
軍用に開発された画像処理や画像分析の技術の進化は著しく、それらが民間に転用されたものも多い。
軍事技術の民間転用の例としては、侵入者検知技術や放置物検知システムなどがあり、すでに実用化されている。
顔や指紋を読み取る「パターン認識」は、すでに防犯技術のみならず、銀行ATMのセキュリティ対策、スマートフォンの本人認証などにも応用されている。
そのほかにも、個人ではなく“群衆”の行動を解析する「群衆行動解析技術」、車両のナンバーを読み取る「Nシステム」、ATMの稼働状況調査や警備を行う「ATM監視システム」など、多様な技術がある。
画像分析技術の進歩
このような画像分析技術が向上したことで、防犯対策はもちろん、本人認証、マーケティングへの応用も行われている。
顔や指紋を読み取る「パターン認識」
パターン認識とは、カメラで撮影した顔や指紋などのパターンをコンピューターで読み取り、認識する技術だ。
顔認証の場合、画像から顔を検出し、目・鼻・口などの特徴点を抽出したあと、あらかじめ登録した顔の特徴データと照合する。
テロ対策や、万引きの再犯対策などにも利用されており、性別・年齢の推定もできることからマーケティングへの応用も行われている。
わかりやすい事例が、タバコの自動販売機だ。2008年からたばこの自動販売機には成人識別機能をつけることが事実上義務付けられ、成人認識ICカード「タスポ」が導入された。
ところが、ICカードがないとタバコが買えない不便さから「タスポ」の普及率は伸びず、自動販売機での売り上げも落ちてしまった。
しかし、ここから別の認証方式へ切り替える動きが出始め、顔認証システムが導入されている。
不審物検知
テロや盗難などの対策に役立つ不審物検知システム。
爆発物といった危険物を察知できるほか、置き去りを検知した場合には警報を発することも可能なため、盗難対策にも応用できる。
富士電機では、搬入された資材なのか、置き去りにされた不審物なのかを画像で検知するシステムを導入している。
侵入者検知
侵入者を検知し、警報を発することができるシステムでは、侵入する人物の大きさ(身長)や侵入方向、速度などが設定可能となっているものがある。
こうしたシステムには、子どもが出入りする学校や病院、ペットを飼っている家など、カメラを設置する場所に応じて設定を変えることができるメリットがある。
警報を鳴らすことにより、利用者への通報はもちろん、侵入者への威嚇も行える。つまり、犯罪を未然に防ぐことも可能となるのだ。
また、屋外に防犯カメラを設置する場合、これまでは太陽光や雨、ヘッドライトなどを侵入者と認識して警報を鳴らすこともあったが、そういった技術面も改善されつつある。
群衆行動解析技術
多くの人が行き交う公共施設や大型施設では、これまでの技術とは異なり個人を特定することなく混雑状況を把握し、異変を検知する必要がある。
例えば、夏祭りやイベントなどでは、異常な混雑から集団で転倒する事故が起きる可能性がある。
あるいは、混雑環境で言い争いを始める者が出て、周囲の人にも転倒・ケガなどの影響があったとする。
こういったときに、防犯カメラを利用し混雑環境での事件・事故を未然に防ぐことができれば、安全性は高まる。
例えばNECは、このような群衆の動きを察知し、混雑状況での異変を検知する「群衆行動解析技術」を世界で初めて開発した。
群衆を“かたまり”として認識するためプライバシーにも配慮されており、また、リアルタイムに異変を察知することができる。
「監視」から「防止」へと進化するセキュリティを支える画像分析技術
「監視」から「防止」へと進化するセキュリティを支え、さらにはマーケティングへの応用も注目されている画像分析技術。
現在では事故や事件を予測するところまで、コンピューターができるようになっている。
防犯やテロ対策などのために開発された技術にも、今後は異なる用途が見いだされ、さらなる進化を遂げるのかもしれない。