労働安全衛生法に基づき、移動式クレーンの過負荷防止装置構造規格が定められ、2019年3月1日以降に製造されるクレーンから適用となりました。
構造規格の改正により、つり上げ荷重0.5トン以上3トン未満の移動式クレーンに荷重計以外の過負荷を防止するための装置を備えることが義務付けられました。
改正前から使用しているクレーンは対象となりません。
厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が合同で発表している資料によると、移動式クレーンの構造規格の改正ポイントは下記の4つです。
改正ポイント
① つり上げ荷重3トン未満の移動式クレーン等の過負荷防止装置について
② 移動式クレーンの設計法について(限界状態設計法の追加)
③ 前方安定度の計算式について(計算式の変更)
④ その他(穴あけの方法の性能規定化、最新の日本工業規格への整合化 など)
まず①の過負荷防止装置について、見てみましょう。
つり上げ荷重3トン未満の移動式クレーン等の過負荷防止装置について
改正前⇒ ‟荷重計”は過負荷を防止する装置として認められていた。
改正後⇒ ‟荷重計”は過負荷を防止する装置として認められず、『定格荷重制限装置』または『定格荷重指示装置』のどちらかを装備することが義務付けられた。
これらの防止装置には、どのような違いがあるのでしょうか?
『定格荷重制限装置』とは、定格荷重を超えた場合、直ちに移動式クレーンの作動を自動的に停止する機能を有する装置です。いわゆる、自動停止型です。
『定格荷重指示装置』とは、定格荷重を超えるおそれがある場合に、当該荷の荷重が定格荷重を超える前に警音を発する機能を有する装置です。警報型といえます。
まとめると、荷重計とは別に『自動停止型』または『警報型』、どちらかの装置を装備することが義務となりました。
次に②設計法の追加について、説明します。
移動式クレーンの設計法について(限界状態設計法の追加)
改正前⇒ 移動式クレーンの設計法は、「許容応⼒設計法」のみでした。
これは、構造部分に作用すると想定される荷重が、鋼材の降伏点などの材料の強度抵抗値を一律の安全係数で除した値以下になるよう設計する方法です。
改正後⇒ 移動式クレーンの設計法は、「許容応⼒設計法」または「限界状態設計法」のいずれかのうち、移動式クレーンの用途等に応じて適切なものを設計者が選択可能になりました。後者は、構造部分に作用すると想定される荷重が、鋼材の降伏点などの材料の強度抵抗値を特性、荷重の種類、接合部の形状に応じて定まる抵抗係数で除した値以下となるよう設計する方法です。
つまり、メーカーの設計者は、お客様の車両に合わせて最適な設計法を選ぶことができるようになりました。
続いて③前方安定度の計算式の変更について、見てみましょう。
前方安定度の計算式について(計算式の変更)
国際基準や国内基準との整合性を図るために計算式が変更されました。
前方安定度とは、荷をつった側における移動式クレーンの安定度の事です。少し複雑な計算式の説明となるため、変更点の説明は割愛しますが、興味のある方は記事最後のPDF資料からご確認ください。
最後に、④その他についてです。
その他(穴あけの方法の性能規定化、最新の日本工業規格への整合化など)
穴あけの方法についての性能規定化や、最新の日本工業規格への整合化、国際規格に適合した機械の適用除外について改正されたほか、エレベーターやゴンドラの構造規格についても同様に改正されました。
以上、移動式クレーンの過負荷防止装置に関する改正ポイントでした。
移動式クレーンによる死亡災害は、年間30件以上発生しているようです。
クレーン操縦による事故を防ぐことは、作業員だけではなく、通行人や周辺地域で生活する住民の安全を守るためにも、大変重要な役割だと感じます。
クレーン付トラックの購入を検討されている方は、これら装置の基準を知っておくとスムーズに導入できると思います。
また、販売店や製造者の方々は、改正ポイントの要点を説明できるようにしておくことで、導入前から導入後のフォローにも役に立ちそうです。
よろしければ、参考にしてください。
参考資料
当社いそのボデーは50年以上に渡り、トラックの製造・修理・メンテナンスを手がけてきた実績があります。
クレーンメーカーよりサービス工場の指定を受けており、 腕自慢の整備士が懇切丁寧にメンテナンスいたします。
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