現在のところ、日本では貨物の盗難に関して比較的低リスクといえるが、海外では暴力を伴う盗難が増加傾向にある。
物流のグローバル化が進む中、近い将来、日本企業にとっても貨物盗難のリスクが無視できなくなる可能性は高い。
そこでいまのうちに、海外の貨物盗難の現状をチェックしておこう。
ヨーロッパの貨物盗難は前年比で89%も増加
物流セキュリティサービスを提供するFreightWatch Internationalの調査によれば、2015年第3四半期のヨーロッパの路上での貨物に関連する犯罪は、2014年の同じ時期に比べて89%も増加しているという。
世界的に見ると、暴力を用いた盗難はフランス、イタリア、ロシア、南アフリカで多いことはよく知られているが、2015年第3四半期には、ドイツや英国などでも増加したようだ。
盗難の手口は?
盗難の原因は、盗難のチャンスが目の前にあったからという場合が大多数である。
セキュリティの甘い駐車場や高速道路のサービスステーションにおいて、ドライバーが寝ている夜間に起こる場合が多く、犯人は車のバックドアをこじ開けたり、トラックの幌のキャンバスを切り裂くなど乱暴な手口が多い。
貨物盗難で多いのは倉庫からの盗難、貨物丸ごとの盗難、そしてハイジャックがそのあとに続く。
英国でのドライバーが襲われた多くのケースでは、セキュリティの高くない駐車場に停めて、貨物の辺りから聞こえてきた音の正体を調べた際に襲われているとのことだ。
狙われやすい物品
最も多く盗難にあった貨物は、食料品・飲料水であった。
続いて、電化製品、衣料品・靴となっている。
米国経済に影響を及ぼす貨物盗難の被害額
2016年5月に発表されたFBIの報告によれば、2014年の貨物盗難の被害額は325万ドルを超え、米国の経済に影響を与えかねないとまで言われている。
出荷場所を狙い大規模化する盗難
従来はトラックストップを狙い、トレーラーの封を破って目的の貨物が見つかるまで探す手口が多かったが、現在では大規模な盗難を行う場合には出荷場所に焦点を当てているという。
狙った運送会社を監視し、トラックの出発・帰着時間をトラッキングしたり、長距離であっても追跡して運送ルートのパターンを把握したりしているようだ。
以前は、道路を320キロメートルも走れば窃盗犯を振り切ることができたが、今では車が何台もいる窃盗団でトラックを追いかけてくるなど手口が執拗になっている。
そして、隙のある「盗みやすいターゲット」を時間をかけて選抜するようになっているとのことだ。
また、テキサスの大きな配送のハブとなったダラスのように、貨物が短期的に多量にプールされるような場所では、貨物の盗難が頻発している。
狙われる物品は同じ
米国でも狙われる貨物は、高価ではなくともすぐに消費できるものが増えてきており、食料品・飲料水がターゲットになっている。
なぜ食料品が狙われるのか?
これには、食べ物にはシリアルナンバーがついていないのが普通であり、RFIDタグも、例えば、ナッツの袋の中にまで隠されていることはないという理由があるようだ。
また、インターネットで売られているナッツがトレースされることはまずないだろうということもある。
さらに、テレビやコンピューターなどは証拠品が長く残るが、食料品の場合は、すぐに食べられて無くなってしまうということも狙われる大きな理由になっているようである。
隙をつくらないことで盗難を予防
貨物の盗難を防ぐためには、「盗みやすい」条件を減らすことが最も大切だと考えられる。
トラックにはセキュリティを強化したボディーを使用したり、休憩時には道路の待避スペースのような場所ではなく、交通量が多くCCTV(有線テレビシステム)が設置されている駐車場で、できるだけ貨物にアクセスしにくいところに停めたりするなどの配慮が必要だろう。
隙をつくらないようにして貨物の盗難を予防したい。